TALKIN' - 土岐麻子 [2007 / エイベックス・エンタテインメント]
10年後でもまったく色あせることがなく聞くことのできる音楽というのは果たして世の中にどれくらいあるのだろう。
土岐麻子が作るアルバムには素敵な楽曲ばかりが揃っていると思うけども、このTALKIN'も例外ではない。音楽を熱く語るほど自分の周りからは人が離れていくけども、自分には素で音楽を楽しむ聞き方がもう出来ないのです。音のバランスや定位感、音色 (おんしょく)、コード進行、ボーカルの雰囲気、グルーヴセンス。頭の中で一つの曲を聞く度に一瞬でこういう要素を判断して聞いてしまう。
テンションまでは拾えませんが、最近曲を聞くとコード進行がある程度読めるようになってしまったので音楽に対する向き合い方はより深くなってきたんだなぁと感じます。そんな聞き方をする人は世の中にはどれくらい居るのだろう。
コード進行が見えると、そこから共通点を感じる楽曲が出てくる。そうするとジャンルを飛んで音楽を聞ける気がするのです。だから自分は勉強し続ける。音楽が好きだからもっと音楽の深いところを知りたい。
モンスターを飼い馴らせ - 土岐麻子
シティ・ポップスが好きな人は土岐麻子が好きと言われるけども、こういう音楽を聞くとスキマスイッチの冬の口笛だったり、秦基博の言の葉を思い浮かべるんですね。シティ・ポップスについて自分は詳しくわからないけども、優しい音楽であることは間違いないと思っていて、その流れを受け継いだ曲はジャンルを越えて現代に存在すると思うのです。
Aメロの一発目のメロディーの音の始まり方の外し方が絶妙で引き込まれる一曲。サビのコードはD# D#/C# っていう分数コードを使った下り方してると思うんだけども、頭の中で勝手にDからC#へ下がる音符を補完してD#M7からD#7という風に弾いてるように聞いてしまうのよね。半音で音が少しだけ動くコード進行は心地よくて恋をする。
2:53あたりのベースの動き回り方がめっちゃグルーヴィーです。3:16あたりのコーラスは楽曲に非常に馴染んでいてマスタリングのバランスが良いことが伝わってきますね。
ファンタジア - 土岐麻子
コード進行の美しさ。弾きすぎないカッコ良さ。ギターとエレピが支え合う静かな伴奏。サビに入ってくるブラスはまるで、Earth, Wind & Fire の After the love has goneのような柔らかさ。
この曲なんといっても2:25からのエレピとドラムとボーカルの部分がカッコイイと思うのです。ベースが抜けて見えてくるエレピで惹かれるコードの美しさがさらに目立って聞こえて、ハイハットの強弱やオープン・クローズドで作られるドラムのリズムが最高に心地よい。
自分が美しいと思う音楽は引き算。良いものを活かすために音数を減らす。こういう音楽を作れる人は天才で本当に尊敬しますね。
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